2年前に勤めてた職場で、ハイヒールを履いてくるおっちゃんがいたんだ。
おっちゃんはファッションにこだわりがあるようだったから、俺としてはまぁ、最近はジェンダーレスとか流行ってるしその流れでおっちゃんも履いてるのかなと思ってあまり気にしていなかった。冬になるとセレブが着てるような毛皮とか着てくるし、そっちの方がむしろ目立ってたかもしれない。
ただ、やっぱり一般的にはあまりそういう人はいないので周りの同僚にはあの人は近づいちゃいけない...みたいな感じで少し距離を置かれていた。
そんなおっちゃんといつのまにか毎日お昼を食べる仲になり、ある日カミングアウトされた。
「実はね、私は性同一性障害なんだ。」
ハイヒールを履いてくるのも、白髪を伸ばして束ねているのも、イヤリングをつけているのも全部それが理由なんだ、と。
あぁ、なるほどねと思った。それなら今までのおっちゃんの行動全てに説明がつくな〜と。
「そうですか。まぁ、俺のおっちゃんに対する接し方は今までと変わりませんから。」
俺はそう返した。今更おっちゃんが中身が女性だったと分かってもおばちゃんとして接することは難しいし、俺はおっちゃんが人として好きだったから。多分そう返したんだと思う。
その時のおっちゃんの反応はよく覚えていないけど、その後に言われた一言が結構頭に残っている。
「あ、でも性的指向は女性だから君は対象外だからね。安心してね。」
どういう事かというと、自分の体が男であることに違和感を感じているけど、好きになる対象は女性だということだった。
あぁ、そういうパターンもあるのか。と少し驚いた。それと同時に、おっちゃんがここまで話してくれるくらい仲が良くなったんだと嬉しくもあった。職場でプライベートの電話番号を交換したのもこのおっちゃんくらいだったんじゃないかな。
おっちゃんには色々世話になった。俺が転職間近になって本性を現した、机をバンバン叩きながら怒り狂う部長に対する対策法を1000字くらいのテキストにまとめて書いてきてくれたり、現在は地下アイドル？となった元カノとの悩み相談に乗ってくれたり...本当に、出会えてよかったと思っている。
そういうおっちゃんがいたんだってのを忘れないために殴り書きしただけなので特にこれといったオチはないです！おわり！！
